新造人間キャシャーン
タツノコプロが製作した吉田竜夫原作のSFアニメ。
テレビアニメ版は、1973年10月2日から1974年6月25日迄、フジテレビ系で毎週火曜日19時00分 - 19時30分に、全38回(35話+再放送3話)にわたり放送されていた。
オリジナルビデオアニメ(OVA)のキャラクターデザインと作画監督を務めたアニメーターの梅津泰臣はタツノコプロ作品の長年のファンだったといい、本作品ばかりか、『科学忍者隊ガッチャマン』と『破裏拳ポリマー』のOVA版でもキャラクターデザインと作画監督を務め、実写版「CASSHERN」の監督紀里谷和明もまた本作のファンであり、成長してクリエイターになった者の手によりリメイクが行なわれた。
リメイク作品として1993年のOVA「キャシャーン」、2004年の実写映画「CASSHERN(キャシャーン)」、2008年のテレビアニメ「キャシャーン Sins」がある。
同社作品『科学忍者隊ガッチャマン』に続くSFヒーローものとして企画され、当初はガッチャマンの後番組として日曜日18時の枠で放映される予定だった。
しかし、ガッチャマンが大人気を博し、放映期間が予定よりさらに1年間延長されることになったため、同時並行で別の放送枠で放映されることになった。
放映が決まったフジテレビ火曜日午後7時の時間帯は当時、『樫の木モック』『けろっこデメタン』と続くタツノコメルヘン路線が敷かれていた枠である。
そのため本作にもその影響が残っており、企画書においてもメルヘン性を盛り込むことが謳われている。
舞台は明確な国籍は設定されていないが、北欧がイメージされて背景美術が描かれ、古城や宮殿、石畳の歩道が登場する中を主人公が流浪する。
また、主人公がいつかは人間に戻ることを望むというピノキオとも通じる要素を持ち、母親が白鳥に姿を変えるというファンタジー色を持つのも一つの特徴である。
その一方で重厚なドラマとハードなアクションが魅力となっている。
ストーリーには当時の日本が高度成長期であり、そのため公害が度々問題となっていた背景がある。
同時期のヒーロー番組では、毎回個性ある敵(怪獣、怪人、ロボット等)が登場し、その能力と任務・作戦を打ち破り阻止するヒーローの戦いがストーリー展開の軸となっていたが、本作では大半のエピソードで、毎回共通して登場する数種類の量産型の戦闘用ロボットが攻撃の主体であるという、当時としては画期的な演出を行っている。
これにより、「ロボット軍団」にふさわしい無機質な不気味さを表現するのに成功していると同時に、ロボットが没個性的な分、ロボットの攻勢にさらされる人間側の生き様(毎回これを象徴する「ゲストキャラ」が登場する)、また、作品の前半部分は人間として民衆のヒーロー的な声援を受けていたが、後半ではアンドロ軍団により民衆の前で機械の身体であることを暴かれ、それ以降は民衆からも虐げられるようになったキャシャーン自身の内面の葛藤が描かれた。
これらのことはガッチャマンが集団にて敵に立ち向かうヒーローなのに対し、キャシャーンは人間側を助けるヒーローでありながら人間側からも支持を得られない孤独のヒーローとして涙を誘い、結果として、現在でも評価の高い人間ドラマを生み出すこととなった。
フレンダーの遠吠えは音響効果スタッフの加藤昭二自らが演じたものにエコーをかけたものだが、この遠吠えもターザンの雄叫びを意識したものである。
また、荒野を彷徨う流れ者というヒーロー像はタツノコプロの先行作品『紅三四郎』があり、声優のオーディションで神谷明とともに残った西川幾雄がキャシャーン役に決定したのも、『紅三四郎』で主人公役を西川が演じた経験をタツノコプロ社長吉田竜夫が買ったものだった。
オイルショックによるスポンサーの宣伝費の削減や、メインスポンサーの文具メーカーの倒産などが原因で、当初の予定よりも短い9か月(3クール)で放送が打ち切られることになり、終盤はやや性急な展開になってしまった。
しかし、タツノコプロ特有の劇画タッチのキャラクターと、主人公の悲劇性、きわめてシリアスなストーリーを持つ本作品は、テレビアニメの放映終了から約40年も経った今でも根強い人気と支持を集め、最終回のラストシーンは希望と共に皮肉な笑いを持つものとして知られる。
日本コロムビアよりテレビアニメ版全9巻、OVA版全1巻でDVD化されている。
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